40歳で十勝に帰って、95歳まで。ライフプランを一本の線にしたら、月5万円働くより実家で暮らすほうが効いた
前の記事で、FIREが増えるとインフレになるという話を書いた。最後にこう書いた。世の中の試算は2人以上世帯が前提で、単身で年金月9万円のわたしには当てはめられない、と。
なら、自分用を作るしかない。
帰る時期そのものは、まだ決めていない。早まることも、後ろにずれることもあると思う。ただ40歳はひとつの節目だから、いったんそこに置いて線を引く。40歳で十勝に帰って、実家で両親と暮らす。働く量も決めていないから、いちばん厳しい「働かない」まで幅で見る。60歳でiDeCoを受け取り、65歳から年金。独身のまま。これを全部1本の時間軸に並べて、いくらあって、いくら使えて、どこで崩れるのかを見ておきたい。
先に書いておくと、この計算でいちばん効いたのは、運用でも労働でもなかった。
1. 前提を決める。ここがいちばん大事だった
数字より先に、前提の置き方を書いておく。ライフプランの計算は、前提しだいでどんな答えでも作れてしまうからだ。
インフレは年2%。日銀が目標にしている水準で、前の記事と同じ。
運用は名目5%とした。この数字は実績から取ったものではなく、いま持っているものを構成比で足して出した。
ヴァンガードの10年期待リターン予測(2026年版・2026年6月末時点)は、これから10年の米国株を年4.2〜6.2%と見ている。わたしの資産は生活防衛資金を除くと68.6%がインデックス(中身はほぼS&P500)、24.1%が日本の高配当株、5.5%がBND、1.8%がビットコインだ。この比率で足すと年4.3〜5.7%、まん中でちょうど5.0%になる。過去の実績ではなく、これからの見通しのまん中を取ったということになる。
これがどれくらい控えめかというと、国が年金の計算に使う財政検証は、物価を引いた実質の利回りを1.4〜3.4%の幅で置いている。わたしの前提は「名目5%−インフレ2%=実質3%」、取り崩し中はさらに税金を引いて実質2%。国の想定の下から2番目あたりになる。
以下の数字は、すべていまの物価に直した金額で書く。名目のままだと「増えて見えるけれど、実は物価が上がっただけ」という錯覚が混ざるからだ。
2. 40歳までに、いくらになるのか
いまは34歳で5,831万円。ただし生活防衛資金の300万円は運用に回さず、60歳に別で受け取るiDeCoの271万円は二重に数えないよう出発点から外している。40歳までは働いて、生活費は収入でまかなう。投資はつみたて枠の月5万円に加えて、年100万円は入れたい。合わせて年160万円だ。
これで計算すると、40歳の資産は名目8,431万円。ただし6年ぶんの物価上昇で割り戻すと、いまの感覚で7,487万円になる。
ちょっと意外だったのは中身のほうだ。6年間で入れる元本は960万円。いっぽう運用が増やすぶんは1,912万円。自分が入れるお金より、すでにあるお金が働くぶんのほうが2倍近く大きい。貯金500万円から始めた8年前とは、完全に立場が逆になっている。
3. 40歳から95歳まで。働かなくても、増え続けた
40歳で仕事を辞めたとして、まずは旅行も贅沢もなし、月12.5万円だけで暮らす前提で線を引いた。
結果、資産は減らなかった。それどころか、95歳で1億1,234万円(いまの物価で)まで増え続ける。
理由は取り崩し率にある。年150万円の生活費は、40歳の資産7,487万円に対して2.0%。4%ルールのちょうど半分だから、運用が増やすぶんの中に生活がすっぽり収まってしまう。
計算はここで終わりだと思った。よかった、足りる、と。
4. 旅行を年100万円入れたら、余裕はほとんど消えた
でも、月12.5万円の生活は「暮らせる」であって「楽しめる」ではない。旅行に行きたいし、ごまもちと出かけたいし、たまには贅沢もしたい。年100万円くらいは、そういうお金に使いたい。
入れて計算し直した。
働かない場合、95歳の残りは1億1,234万円から1,204万円へ。約1億円の差だ。取り崩し率は2.0%から3.3%に上がる。年100万円の旅行は、この計画の余裕をほとんど使う。
じゃあ、いくらまで使えるのか。年150万円にすると80歳で尽きる。年200万円なら69歳。95歳まで持たせるなら、自由に使えるお金の上限は年109万円だった。
ゆるく働くと、ここが大きく変わる。月3万円で95歳の残りは3,299万円、月5万円なら4,695万円。旅行をしながら余裕も残したいなら、少し働くのがいちばん素直な答えになる。
5. 崩れる条件をさがす
ここからは意地悪な計算をする。「旅行100万円・働かない」を基準にして、条件をひとつずつ悪くしていく。
見て気づくのは、ちぐはぐさだ。年金がさらに目減りしても95歳まで持ち、80歳から施設に入っても90歳までは持つ。それなのに運用が1ポイント下がるだけで83歳、2ポイントなら74歳で尽きる。この計画は年金や介護費より、運用に強く頼っている。
年金についてはひとつ補足しておきたい。年金は名目で据え置かれるわけではなく、物価に合わせて毎年改定される。そうでなければ、困る人であふれてしまう。ただし満額は追いつかない設計で、マクロ経済スライドという仕組みのぶん、物価より少し低く改定される期間が続く。2024年の財政検証の厳しめのケース(過去30年投影ケース)では、基礎年金のこの調整が2057年度まで続く。わたしが65歳になるのは、ちょうどその2057年だ。
ここで気をつけたいことがある。よく聞く「基礎年金は3割目減りする」という言い方は、現役世代の手取りと比べた比率(所得代替率)が36.2%から25.5%に下がるという意味で、物価と比べた金額の話ではない。賃金は物価より少し速く伸びる前提なので、同じ資料の数字(現役男子の手取り月37.0万円・実質賃金上昇率0.5%)から物価と比べた金額に直すと、下げ幅は3割ではなく2割ほどになる。1年あたりにすると0.5〜0.6%ずつ削られていく感覚で、物価が2%上がる年なら年金は1.4%くらいしか上がらない、ということだ。
わたしの年金は基礎6.5万円+厚生2.5万円で月9万円。削られるのは基礎の部分だけなので、2割引くと月7.7万円になる。ただこの計算ではいまの価値で月7万円ぶんとして置いた。0.7万円ぶん辛く見ていることになるが、年金は下振れしたときに取り返しがつかないので、ここは厳しめのままにしておく。
6. いちばん効いたのは、実家で暮らすことだった
最後に、この計画の急所を確かめた。運用が税引き後2%まで下振れした状態で、住まいと働き方を入れ替えて比べる。
実家で暮らすことは、月5万円働くことより効いた。9年対6年。
これは、ちょっと不思議な結論だと思う。わたしが実家で暮らしたいのは、お金の話ではないからだ。年老いた両親と過ごせる時間は限られていて、そばにいたいから帰る。生活費は家に月5万円入れるし、お金の面で頼る気はない。
でも数字にすると、その選択が、運用より労働よりも強くこの計画を支えていた。お金のために選んだわけではないことが、お金の面でもいちばん強い一手だった。
この計算に入れていないこと
だからこの線は、一度引いたら終わりの設計図ではなくて、毎年の資産公開で答え合わせをしていく下書きだと思っている。前提が動いたら、線も引き直す。
引き直すたびに手で計算するのは大変なので、この記事の計算はそのままシミュレーターにしてブログに置いた。年齢と資産と生活費を入れれば、同じ線が自分の数字で引ける。
まとめ
- 34歳・5,831万円から、年160万円ずつ投資すると40歳で8,431万円(いまの物価で7,487万円)。入れる元本960万円より、運用が増やす1,912万円のほうが大きい
- 前提はインフレ2%・運用は名目5%(取り崩し中は税引きで実質2%)。国の財政検証の下から2番目あたりの控えめな置き方
- 旅行なしなら、40歳で完全に仕事を辞めても資産は増え続けて95歳で1億1,234万円。取り崩し率2.0%は4%ルールのちょうど半分
- 旅行を年100万円入れると、95歳の残りは1,204万円。年150万円だと80歳で尽きるので、自由に使える上限は年109万円
- 年金は物価スライドで実質が保たれる制度。ただしマクロ経済スライドの目減りを見込んで、月9万円をいまの価値で月7万円ぶんとして計算した。それでも頼っているのは年金ではなく運用で、税引き後2%に下がると74歳で尽きる
- 運用が下振れしたとき、実家で暮らすことは月5万円働くより効いた(+9年対+6年)。お金のために選んだわけではないことが、いちばん強い一手だった
- ただし運用を毎年一定と置いた計算で、取り崩し初期の暴落には弱い。毎年の資産公開で答え合わせしながら、線を引き直していく
つみたて枠のオルカンも、成長投資枠の日本の高配当株も、iDeCoも、この記事の計算の中身はぜんぶSBI証券にあります。ライフプランを引くにも、まず自分の数字が1か所にまとまっていることが出発点でした。わたしが8年使っているメイン口座です。
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