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サイゼリヤが、本当に値上げした。「言っただけでストップ高」から3か月、答え合わせをしてみた
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サイゼリヤが、本当に値上げした。「言っただけでストップ高」から3か月、答え合わせをしてみた

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ごまもち
🐾 ごまもち
サイゼリヤ、ほんとにねあげしたの?🐾
あずき
あずき
うん。7月に「考えてる」って言ってた値上げを、本当に決めたんだ。

ミラノ風ドリアが、300円ではなくなる。

7月、サイゼリヤの社長が決算の場で、値上げを「視野に入れる」と話しただけで、株価はストップ高(1日に上がってよい上限まで上がること)になった。そのときの記事では、値上げのニュースで株が上がる仕組みを「てこの原理」で説明した。もうけがうすい商売ほど、少しの値上げで、利益が何倍にも増える。てこのように、小さな力が大きく効く、という話だ。

そして10月14日、サイゼリヤは決算と一緒に、本当に値上げを発表した。10月29日から、メニュー全般で平均6%。翌15日の朝、日経平均が大きく下げる中で、サイゼリヤの株は前日より1割ほど高い7,300円で始まった。

7月に書いたことは、当たっていたのか。答え合わせをしてみる。

先に答えを言うと
🍝「ドリアは、いくらになるの?」
→ 300円から320円に。メニュー全般で平均6%の値上げ(10月29日から)
🧮「『てこの原理』は、当たっていたの?」
→ 会社の計画に表れていた。1,000円売っても、残るもうけは30円ほど。だから小さな値上げでも、会社は国内のもうけを約1.7倍にする計画を立てた
📈「この3か月、株価はどう動いたの?」
→ 「値上げするかも」で急に上がり、そのあと2割以上下げた。値上げを発表した翌日は、1割ほど高く始まった
順番に見ていく。

1. 何が決まったの?

まず、値上げの中身から。

🍝 サイゼリヤの価格改定(10月29日から、税込み)
上げ幅
メニュー全般で平均6%。メニューの約8割が、1品10〜100円上がる
ミラノ風ドリア
300円 → 320円
400円の品
420〜430円
一部の24店舗
レジャー施設の周辺や都市部の店は平均10%。ドリアは330円
据え置き・値下げ
ランチ、モーニング限定メニュー、フレッシュワインは据え置き。ビールは10円下げて390円
サイゼリヤ「10月29日(木)価格改定のお知らせ」(2026年10月14日)と、日本経済新聞・時事通信(10月14日)から。時事通信は、メニューのほぼ全般に及ぶ値上げは1998年の上場以来初めてと伝えている

会社は、値上げの理由をこう書いている。

当社の努力不足により、食材の不足や原価上昇を吸収できない事態が発生

要は、原材料が高くなりすぎて、もう自分たちの工夫だけでは吸収できない、ということだ。「努力不足」と自分から書くところに、長く「値上げしない」を続けてきた会社らしさが出ていると思う。決算短信でも、これまでのメニュー価格を維持する方針を、状況に応じて価格を改定する方針に変えると書いている。

2. 答え合わせ① 「てこの原理」は当たっていた?

7月の記事では、架空のお店で計算した。1,000円の料理を出して、もうけが50円(利益率5%)のお店がある。10%値上げして1,100円にすると、コストが変わらなければ、もうけは150円。利益は3倍になる。

実際の数字と並べてみる。

🧮 架空のお店の計算と、実際のサイゼリヤ
利益率 架空のお店 5% 実際 約3%(国内) 値上げ幅 架空のお店 10% 実際 平均6% 利益の伸び 架空のお店 +200%(3倍) 実際 +66%(約1.7倍、会社の計画)
実際の数字はサイゼリヤ「2026年8月期 決算短信」「決算説明資料」と、10月14日の価格改定のお知らせから。利益率は国内(日本セグメント)の営業利益60.1億円÷売上高2,033億円。利益の伸びは、国内の営業利益が2026年8月期の60.1億円から2027年8月期の計画で100億円になる割合

実際のサイゼリヤの国内の利益率は約3.0%で、架空のお店の5%よりさらにうすかった。値上げ幅は、架空のお店の10%より小さい平均6%。サイゼリヤの数字を同じ計算に当てはめると、1,000円売ってもうけが30円のお店が6%値上げすれば、コストが変わらない限り、もうけは90円。やはり3倍になる。

でも会社の計画は、国内の営業利益を60億円から100億円へ、約1.7倍にするものだった。3倍に届かない理由を、会社は説明していない。日経によると、値上げで国内の粗利率(売上から食材などの原価を引いて残る割合)は2ポイント良くなる効果があるという。でも会社の計画では、国内の粗利率は51.7%から52.1%へ、0.4ポイントしか良くならない。値上げの効果の多くは、コストの上昇などで消える前提だと読める。実際、2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)も、海外から仕入れる食材にかかる為替の影響で約32億円、鶏肉などの値上がりで約19億円、国内の利益が押し下げられていた。

それでも、利益がうすいお店ほど、値上げが利益に大きく効く。てこの原理そのものは、会社の計画に表れていた。

ちなみに、会社全体の2027年8月期の計画は、営業利益が29%増の212億円。4期連続で最高益を更新する見込みだ。ただし増益の大半は下期(2027年3〜8月)に置かれていて、上期(2026年9月〜2027年2月)の営業利益はほぼ横ばいの計画だ。

3. 答え合わせ② 「どこでも同じ値段」は、どうなった?

ごまもち
🐾 ごまもち
おみせによって、ねだんがちがうの?🐾
あずき
あずき
24のお店だけね。ほかは、全国同じ値段のままだよ。

「日本全国、どこでも同じ安さ」は、サイゼリヤの看板だった。場所ごとに値段を変えるなら、会社の考え方そのものの大きな転換になる。

結果は、一部だけの導入。レジャー施設の周辺や都市部の24店舗だけが平均10%の値上げで、ドリアは330円。残りの店は平均6%で、ドリアは320円になる。

4. 答え合わせ③ 株価は、この3か月でどう動いた?

📈 サイゼリヤの株価(2026年7月〜10月14日、終値)
6,000 7,000 8,000 7月 8月 9月 10月 7/16 ストップ高 6,780円 7/29 終値の最高値 8,310円 9/24 6,310円 10/14 6,550円
Yahoo Financeの日次の終値(株探の日足と照合)。7月15日の終値は5,780円。7月29日の取引時間中の高値は8,420円。10月14日の取引が終わったあとに、決算と値上げを発表した

7月16日、値上げを「視野に入れる」という一言でストップ高。そのあとも上がり、7月29日には終値で8,310円の最高値をつけた。7月15日から2週間で、44%上がったことになる。

でも、そこから下がり始める。9月24日には6,310円まで下がり、最高値から2割以上下げた。決算を発表した10月14日の終値は6,550円で、ストップ高の日の6,780円より安い水準だ。

そして翌15日、株価は1割ほど高く始まった。

株価は「起きたこと」より「これから何が起きるかの見立て」に反応する。この3か月は、その見本のような動きだったと思う。「値上げするかも」で大きく上がり、いつ、どれだけ値上げするのか見えないまま下がり、「本当に値上げする」で、また上がった。それでも、7月29日の最高値には、まだ届いていない。

5. わたしの見方

財布の目線では、わたしにとって外食は、人生を楽しむために「使うと決めて使うお金」だ。値上げされても、食べたければ払うだけだ。

投資の目線では、値上げのニュースは「この会社のもうけは、どれだけ変わるのか」を考える材料になる。まず、その会社のもうけがうすいのか、厚いのかを見てみる。もうけがうすい会社ほど、値上げが利益に大きく効く。サイゼリヤの値上げで株価が大きく動いたのも、そう読むと納得がいく。

経済学の父と呼ばれるアダム・スミスは、1776年の『国富論』にこう書いている。

わたしたちが夕食にありつけるのは、
肉屋や酒屋やパン屋の善意のおかげではない。
彼らが自分の利益を考えるからだ。
It is not from the benevolence of the butcher, the brewer, or the baker that we expect our dinner, but from their regard to their own interest.
アダム・スミス『国富論』第1編第2章(1776年)

スミスはスコットランドの学者で、『国富論』は「国の豊かさとは何か」を問う本だ。当時のヨーロッパでは、金や銀をたくさんため込む国が豊かだと考えられていた。スミスはそれに反対して、国の豊かさは、人々がつくり、交換するものの多さだと考えた。

この言葉が出てくるのは、人がなぜ分業し、ものを交換するのかを説明する章だ。パン屋は、わたしたちのことを思ってパンを焼いているわけではない。売れば自分の暮らしが立つから焼いている。わたしたちも、パン屋の思いやりにすがるのではなく、お金を払って、相手にも得になる取引をする。 ただ、スミスは「自分さえよければいい」と言ったわけではない。その17年前には『道徳感情論』という本で、人が相手の気持ちを思いやる心が大事だと論じている。それぞれが自分の暮らしのために働き、相手にも得になる形で交換する。そのほうが、善意だけに頼るよりも、社会全体がうまく回る。この言葉には、そういう意味がこめられている。

サイゼリヤの安さも、善意だけで続いてきたわけではない。安さでお客さんを集めることが、商売として正しかったから続いてきた。そして今、原材料が高くなって、その計算が合わなくなった。だから値上げする。安さも値上げも、どちらも商売としての判断だ。

お客さんが320円のドリアを「それでも食べたい」と思えば、取引は続く。会社とお客さんの両方が得をする値段かどうか、それを決めるのは、10月29日からのお客さんだ。


6. まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • サイゼリヤが10月29日から、メニュー全般で平均6%値上げ。ミラノ風ドリアは300円から320円に
  • 7月は値上げを「視野に入れる」と話しただけでストップ高。値上げを発表した翌日の10月15日、株価は1割ほど高く始まった
  • 国内の利益率は約3%とうすい。平均6%の値上げで、会社は国内の営業利益を約1.7倍にする計画
  • 計算では3倍でも、会社の計画は約1.7倍。値上げの効果の多くは、コストの上昇などで消える前提だと読める。それでも「てこの原理」は計画に表れていた
  • 「どこでも同じ値段」は、24店舗だけ平均10%に変わった。ドリアは330円
  • 株価は7月29日の最高値(終値)から2割以上下げたあと、戻り始めたところ。値上げのニュースは、その会社のもうけのうすさから読むと分かりやすい
📚 参考にした情報源 ・値上げの内容:サイゼリヤ「10月29日(木)価格改定のお知らせ」(2026年10月14日)
・決算:サイゼリヤ「2026年8月期 決算短信」、同「決算説明資料」(2026年10月14日)
・報道:日本経済新聞(2026年7月16日)、日本経済新聞(2026年10月14日)、時事ドットコム(2026年10月14日)、株探(2026年10月14日)、株探(2026年10月15日)
・株価:Yahoo Financeの日次の終値(サイゼリヤ 7581、日経平均)、株探 時系列
・格言:Adam Smith『An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations』(Project Gutenberg)(訳はわたし)
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の考えと感じ方の記録です。特定の銘柄・金融商品への投資を推奨・勧誘するものではありません。会社の業績予想は将来を保証するものではありません。

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