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稼いだお金が、日本に帰ってこない。過去最大の黒字なのに円安が進む理由を調べてみた
ニュース2026-08-11📖 約13分で読めます

稼いだお金が、日本に帰ってこない。過去最大の黒字なのに円安が進む理由を調べてみた

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ごまもち
🐾 ごまもち
にほんは、いちばん もうかったんでしょ?🐾
あずき
あずき
そうなの。なのに円は安くなってて、そこが不思議だったの。

8月10日、財務省が上半期の国際収支を発表した。経常黒字は17兆4,292億円で、過去最大だという。

なのに、円は安くなっている。

たくさん稼いだ国の通貨は、買われるはずだ。

気になったので、中身を調べてみた。


1. 過去最大の黒字なのに、円は売られている

まず、発表された数字から。

📊 2026年上半期の経常収支
経常黒字は17兆4,292億円(前年同期比+22.5%
比較できる1996年以降で、上半期として過去最大
輸出も59兆1,929億円(+12.8%)で、半導体・電子部品は+41.1%

貿易収支も5年ぶりに黒字に戻った。7,421億円。前年同期は1兆4,636億円の赤字だったので、2兆円以上の改善になる。

数字だけ見れば、絵に描いたような好調だ。

ところが、為替はこう動いた。

⚠ そのあいだの円
7月23日に163.99円をつけた(上半期を越えたあと)
これは約40年ぶりの円安水準
稼いでいるのに、通貨は売られている

教科書どおりなら、逆になるはずだ。輸出で稼げば、その代金を円に替える動きが出て、円が買われる。


2. 黒字の中身を見たら、答えが書いてあった

経常収支は、4つの合計でできている。内訳を並べたら、すぐに分かった。

🔍 経常黒字17.4兆円の内訳
項目 金額
貿易収支 +7,421億円
サービス収支 赤字(旅行の収入が減って拡大)
第一次所得収支 +20兆4,914億円
第二次所得収支 ▲1兆9,821億円

おかしなことに気づく。

経常黒字は17.4兆円。でも第一次所得収支だけで20.5兆円ある。

ごまもち
🐾 ごまもち
ぜんたいより、おおきいの?🐾
あずき
あずき
そう。ほかがマイナスだから、こうなるの。ここから謎がとけていくんだよね。

黒字を作っているのは、貿易ではなかった。

輸出が好調なのは本当だけれど、貿易の黒字は7,421億円。第一次所得収支の28分の1しかない。

日本の稼ぎは、もう「モノを売ること」ではなくなっている。


3. 第一次所得収支とは、なんなのか

聞き慣れない言葉なので、ここは丁寧に見ていく。

💡 ひとことで言うと
日本が海外に持っている「財産」から生まれた稼ぎ
働いて得たお金ではなく、持っているから入ってくるお金

中身は、大きく3つに分けられる。

🏦 第一次所得収支の中身
① 海外の子会社や工場から受け取る配当
② 外国の債券や株から入る利子・配当
③ 海外で働いた人が受け取る報酬

いちばん大きいのは①だ。トヨタもソニーも、いまは海外で作って海外で売っている。その現地法人が稼いだ利益が、日本の親会社に配当として渡る。

わたしたちの家計で言えば、こうなる。

🏠 家計にたとえると
貿易収支 … 働いて得た給料
第一次所得収支 … 持っている株や不動産から入る配当・家賃
→ 日本はいま、給料より配当のほうがはるかに多い家になっている

日本は「働いて稼ぐ国」から「持っていて稼ぐ国」に変わった。そう言われる理由が、この数字だった。

ごまもち
🐾 ごまもち
それって、いいことじゃないの?🐾
あずき
あずき
稼ぎとしてはいいの。でも、円にとってはちょっと違うんだよね。

4. なぜ、稼いだお金が円に戻らないのか

ここが、いちばん知りたかったところだ。

貿易で稼いだドルは、円に替えられる。日本国内の工場で作って輸出したなら、受け取ったドルを円に替えて、国内の給料や仕入れを払う必要があるからだ。

でも、海外子会社の利益は違った。

🔁 帳簿には載るのに、お金は動かない
海外の子会社が稼ぐ ドルやユーロで利益が出る ① 親会社の取り分 として計上される 統計では「日本の黒字」 第一次所得収支に入る ② でも、お金は 現地に残る そのまま現地で再投資 工場や設備、次の事業へ 円に替えられないので、円は買われない 黒字は増えるのに、円安は止まらない
統計は「日本の取り分がいくらか」を記録するもので、お金が実際に日本へ移動したかどうかは別ということ

帳簿の上では日本に入っているが、お金そのものは動いていない。

現地で稼いだドルは、現地の工場や設備に回される。そのほうが合理的だからだ。わざわざ円に替えて日本に持ち帰り、また使うときにドルに戻すのは、手間も為替の損も大きい。

そして、統計にはそれ専用のしくみがあった。再投資収益という。

📒 帳簿だけが動くしくみ
子会社が利益を現地に残すと、再投資収益として記録される
第一次所得収支に「受け取った」と計上
② 同時に金融収支に「投資した」と同額を計上
一度もらって、すぐ投資し直したとみなすという処理

日本銀行の説明では、こう書かれている。

一旦配分された後、直ちに再投資されたものとみなして計上する

受け取ってもいないし、投資し直してもいない。現地に置いたままなのに、統計の上では2回動いたことになっている。

円が買われないのは当然だった。円に替える場面が、そもそも少ない。

厳密には、まったく動かないわけではない。現地の子会社が日本から機械や部品を買えば、そのぶんは円が買われる。技術の使用料を日本の親会社に払う形もある。

ただ、大半は現地の工場や人に使われる。日本へ実際に戻ってくるお金は、統計に載る金額よりずっと小さい。

もうひとつある。円を買う側の動きも、そもそも小さい。

会社が外国に工場や子会社をつくることを、直接投資という。これには、出ていく側と入ってくる側がある。

🔀 出ていく投資と、入ってくる投資
出ていく … トヨタがアメリカに工場をつくる
→ 円を売ってドルを買うので、円安の方向に働く

入ってくる … TSMCが熊本に工場をつくる
→ 外貨を売って円を買うので、円高の方向に働く

この2つの量が、まったく釣り合っていない。

⚠ 入ってくる側が、極端に少ない
日本に入ってきている直接投資の残高は、GDPの5〜8%ほど
OECD加盟38か国の平均は67%。日本はその38か国で最下位
出ていく円はあるのに、入ってくる円がほとんどない

TSMCの熊本工場は大きなニュースになった。でも、あれくらいのことがめったに起きないというのが、この数字の意味だ。

理由は、誘致がへただからだけではなかった。日本市場そのものが伸びると思われていないこと、参入のハードルが高いこと。構造的な事情がある。

政府も問題だと考えていて、2030年までに120兆円に増やすという目標を立てている。もともと80兆円だったものが、100兆円、120兆円と二度引き上げられた。それでも2024年末の残高は53.3兆円で、まだ半分ほどだ。

黒字なのに円安、という矛盾の正体はここだった。統計が測っているのは稼ぎで、為替を動かすのは実際の売り買いこの2つが、ずれている。


5. 第一次所得収支には、出ていく側もあった

ここまで、第一次所得収支を日本に入ってくるお金として書いてきた。でも、それだけではなかった。

気づいたのは、6月の数字を見たときだ。6月単月の経常収支は、▲923億円の赤字。17か月ぶりだった。

📉 2026年6月単月
項目 金額
経常収支 ▲923億円(17か月ぶりの赤字)
第一次所得収支 3,801億円(前年同月比▲1兆648億円

上半期で20兆円あった第一次所得収支が、6月は3,801億円しかない。前年の同じ月と比べると、73.7%減だ。

理由を見て、目が留まった。

⚠ 減った理由
日本企業から、海外の投資家へ支払う配当が増えた
海外から日本株への投資が活発だったぶん、出ていく配当も増えた
→ 第一次所得収支は、受け取りから支払いを引いた残りだった

そういうことか、と思った。

日本企業の株を、海外の投資家も持っている。その人たちへ払う配当は、日本から出ていくお金だ。第一次所得収支は、受け取る分から、この出ていく分を引いた残りを示している。

ごまもち
🐾 ごまもち
にほんも、はらってるんだ🐾
あずき
あずき
そうなの。もらう話だとばかり思ってたから、ちょっと驚いた。

そして、日本企業の配当は3月期決算の会社が6月に支払うものが多い。6月は、もともと出ていく側が膨らむ月だった。

ここで、4章の話とつながる。TSMCが熊本に工場をつくれば、そのときは円が買われる。でも、その会社が利益を出せば、今度は毎年、配当を海外へ払い続けることになる。

🔁 入ってくるお金には、出ていく約束がついてくる
海外から投資が入る → そのときは円が買われる
その後、利益から配当が出る → 毎年、円が売られる
一度きりの円買いと、続いていく円売り

同じ数字でも、切り取りかたで逆に見える。上半期は過去最大の黒字なのに、6月だけは赤字。海外からの投資は、円買いにも円売りにもなる。


6. この傾向は、これからも続くのか

いちばん気になるところだけれど、わたしには分からない。

続きやすい理由と、変わりうる理由を並べてみた。

⚖️ どちらの理由もある
続きやすい理由 変わりうる理由
国内市場が縮むので、企業の海外進出は構造的 日米の金利差が縮めば、円に戻す動きが出る
現地で再投資したほうが企業にとって合理的 円安が行きすぎれば、国内で作る動機が生まれる
対日投資が少ない状況は、すぐには変わらない 政策しだいで変わりうる。ただし配当を戻すと税を軽くする仕組みは2009年からあるのに、まだ戻っていない

どちらに転ぶかは、わたしには読めない。


7. だから、備える側に置く

読めないなら、どうするか。当てにいかないで、どちらに転んでもいいようにしておく。

これは、わたしがずっと書いてきたことでもある。

🧭 通貨を分けておく意味
円安が進めば、外貨建ての資産が増える
円高に戻れば、円で持っている分は目減りしない
どちらが来ても、片方は残るという形にしておく

当てるための分散ではない。当てられないから分散する。目的が逆だ。

実際、円が163.99円から157.85円へ動いたときは、外貨建て約4,100万円が約154万円目減りした米雇用統計の記事に書いた。7月末の高値から2週間ほどでの話だ)。

円高でも円安でも、どちらかが痛む。それが分けておくということだと思っている。


8. わたしの場合は、ほとんど円とドルだ

💴 わたしの通貨の内訳
… 日本株と、生活防衛資金
ドル … S&P500、オルカン、外国債券
→ オルカンに他の通貨も入ってはいるが、実質は円とドルの2軸

それでも、いまはこれでいいと思っている。

ごまもち
🐾 ごまもち
ふたつで、たりるの?🐾
あずき
あずき
いまはね。住んでるのは日本で、稼いでるのも円だから。

わたしが暮らしているのは日本で、仕事の報酬も円で受け取っている。だから、円がゼロでは困る。

いっぽうで、円だけで持つリスクも書いてきたとおりで、円だけというのも怖い。

その2つを分けてあれば、いまの自分には足りている


9. 「戻ってこないお金」の一部は、わたしだった

ここまで書いて、気づいたことがある。

海外で稼いで、円に戻さないお金。この記事はずっとその話をしてきた。

🪞 自分の資産に置き換えると
S&P500とオルカンの評価益は、ドルのまま置いてある
配当や分配金も、円に替えずに再投資される
→ つまりわたしも、円に戻していない側にいる

規模はまったく違うけれど、やっていることは同じだった。

海外で増えたお金を、円に替えずにそのまま置いておく。そのほうが合理的だから

円安を「困ったこと」として読んでいたけれど、わたしはその流れの内側にいた。

ごまもち
🐾 ごまもち
あずきも、もどしてないんだね🐾
あずき
あずき
うん。だから、他人事として書くのはちょっと違うなと思ったの。

10. まとめ

🐾 この記事のまとめ
  • 2026年上半期の経常黒字は17兆4,292億円(前年同期比+22.5%)で、比較できる1996年以降の上半期として過去最大。貿易収支も5年ぶりに黒字(7,421億円)
  • それなのにそのあいだ円は売られ続け、7月23日には163.99円と約40年ぶりの円安水準をつけた
  • 黒字の中身は第一次所得収支が20兆4,914億円。貿易の黒字はその28分の1しかなく、黒字を作っているのは貿易ではなかった
  • 第一次所得収支は海外に持っている財産から生まれた稼ぎ。家計にたとえると給料ではなく、配当や家賃にあたる
  • 海外子会社の利益は、円に替えられない。統計は「受け取って、すぐ投資し直した」とみなして両方に計上する(再投資収益)。つまり円に替える場面が、そもそも少ない
  • 円を買う側の動きも小さい。日本に入ってきている直接投資の残高はGDPの5〜8%ほどで、OECD38か国の最下位だった
  • 統計が測っているのは「稼ぎ」で、為替を動かすのは「実際の売り買い」。この2つがずれているのが、黒字なのに円安の正体だった
  • 6月単月は▲923億円の赤字。第一次所得収支は受け取りから支払いを引いた残りで、海外投資家への配当が増えていた。一度きりの円買いと、続いていく円売り
  • この傾向が続くかはわたしには分からない当てるための分散ではない。当てられないから分散する。わたしの通貨は円とドルの2軸だけだ
  • 最後に気づいたのは、「円に戻ってこないお金」にわたし自身も入っているということ。規模はまったく違うけれど、企業と同じことを小さくやっていた
ごまもち
🐾 ごまもち
よそうしないで、そなえるんだね🐾
あずき
あずき
そう。読めないから、どっちが来ても困らない形にしてあるの。
📚 参考にした情報源 ・上半期の国際収支:財務省「令和8年上半期中 国際収支状況(速報)の概要」日本経済新聞「1〜6月の経常黒字、22.5%増の17兆4292億円」
・6月単月の国際収支:財務省「令和8年6月中 国際収支状況(速報)の概要」
・過去最大の位置づけ:時事通信「26年上半期の経常黒字、過去最大 17.4兆円、半導体輸出好調」
・対内直接投資の水準:ニッセイ基礎研究所「対内直接投資倍増は実現できるのか」内閣府対日直接投資推進室「対日直接投資の現状」
・統計の用語:財務省「用語の解説」日本銀行「国際収支関連統計の解説」日本銀行「国際収支関連統計のFAQ」(再投資収益の計上方法)
⚠ 免責事項 この記事はあずき個人の見解・体験のシェアであり、特定の投資手法・金融商品・通貨を推奨・勧誘するものではありません。記事中の数字は2026年8月時点のもので、その後変動します。為替の先行きについて何かを予測するものではありません。わたしの資産の推移も一個人の記録であり、同じ結果を約束するものではありません。投資は価格が変動し、元本を割り込む可能性があります。必ずご自身の判断と責任で行ってください。

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